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アパートの悲劇!ゴキブリが招いた配管トラブル
そのアパートは、築二十年ほどのどこにでもある二階建ての建物だった。事件の発端は、二階に住む田中さん(仮名)が自室で発見した一匹のゴキブリだった。驚いた田中さんは、殺虫剤でゴキブリを仕留めた後、その死骸をトイレットペーパーで包み、何も考えずにトイレに流してしまった。視界から消えたことで安心した田中さんは、そのことをすぐに忘れてしまった。数日後、異変は一階に住む佐藤さん(仮名)の部屋で起きた。トイレの水の流れが明らかに悪くなっているのだ。最初は気のせいかと思ったが、日を追うごとに悪化し、ついには水が溢れそうになる始末。佐藤さんは困り果て、アパートの管理会社に連絡を入れた。連絡を受けた管理会社の担当者と水道業者が調査に訪れた。業者は、ラバーカップを使ったり、薬剤を投入したりしたが、詰まりは一向に解消しない。これは配管の奥で何かが起きていると判断し、高圧洗浄機と配管カメラを導入して本格的な調査を開始した。カメラが配管の内部を進んでいくと、二階と一階を繋ぐ縦管の曲がり角あたりで、何かが詰まっているのが確認された。高圧洗浄でそれを破壊し、流れ出てきたものを回収して確認すると、そこにはトイレットペーパーや髪の毛に絡まった、ぼろぼろになったゴキブリの死骸があった。原因は明らかだった。二階の誰かが流したゴキブリが、配管の途中で引っかかり、そこに後から流れてきた様々なものが蓄積して、強力な詰まりを引き起こしたのだ。管理会社はアパートの全戸に聞き取りを行い、田中さんがゴキブリを流したことを正直に申し出た。幸い、修理費用は管理会社の火災保険で対応できたが、この一件はアパートの掲示板に「トイレに異物を流さないでください」という強い警告文が張り出されるきっかけとなった。田中さんの一瞬の安易な行動が、他人を巻き込む大きなトラブルに発展してしまったこの事例は、集合住宅で暮らす上で、ゴキブリ一体の処理がいかに重要であるかを物語っている。