鳩対策として様々な「鳩が嫌がるもの」が紹介されていますが、その効果には科学的な根拠があるのでしょうか?害虫・害獣駆除の専門家の視点から、鳩の習性と嫌がるものの関係について解説します。まず、視覚的な刺激についてです。鳩は色覚を持っており、特定の色や光の反射を警戒する傾向があります。例えば、強い光の点滅や乱反射は、鳩にとって不快な刺激となり、一時的に避ける行動をとることがあります。CDやキラキラ光るテープが初期段階で効果を示すのはこのためです。また、猛禽類(タカやフクロウ)の姿を模したものは、天敵に対する警戒本能を刺激することを狙っています。しかし、鳩は学習能力が高いため、それらが動かない、あるいは実害がないと判断すると、すぐに慣れてしまいます。そのため、視覚的な刺激による忌避効果は、一般的に持続性が低いと考えられています。次に、聴覚的な刺激です。鳩にも可聴域があり、特定の周波数の音や、急な大きな音を嫌うとされています。超音波発生装置は、鳩の可聴域で人間には聞こえにくい高周波音を利用するものですが、その効果については科学的なデータが乏しく、有効性は疑問視されることも少なくありません。また、猛禽類の鳴き声や破裂音は、一時的な威嚇効果は期待できますが、これも慣れが生じやすく、また近隣への騒音問題を引き起こす可能性があるため、使用には注意が必要です。嗅覚に関しては、鳩が特定の匂いを嫌うという明確な科学的根拠は、実はあまり確立されていません。ハーブや木酢液、クレゾールなどの強い匂いが忌避剤として用いられますが、これは人間が「不快だろう」と推測している側面が強く、鳩自身がどれほど強く忌避するかは個体差や状況によるところが大きいと考えられます。効果があったとしても、匂いが薄れれば効果もなくなります。最後に、触覚的な刺激、つまり物理的な防御策です。剣山やワイヤー、ネットなどは、鳩が止まったり侵入したりすることを物理的に不可能にするため、最も確実で効果的な方法と言えます。鳩が「ここは居心地が悪い」「入れない」と学習すれば、その場所を避けるようになります。結論として、科学的な観点から見ても、鳩が嫌がるものの中で最も効果的で持続性が高いのは、物理的な障壁を作ることです。他の視覚、聴覚、嗅覚による対策は、補助的なもの、あるいは一時的な効果を期待するものと捉えるのが現実的でしょう。