本日は、長年、住宅の排水管メンテナンスに携わってきた専門家の田中さんにお話を伺います。最近、ゴキブリをトイレに流してしまう人が多いと聞きますが、プロの視点から見ていかがでしょうか。「ええ、その話はよく耳にしますし、実際にそれが原因と思われる詰まりの現場も見てきました。結論から言うと、ゴキブリをトイレに流すのは絶対にやめていただきたい行為です。多くの方は、あんなに小さいもの一つくらい大丈夫だろう、とお考えになるようですが、それが大きな間違いの始まりなのです。ゴキブリの体は、人間の排泄物やトイレットペーパーとは全く性質が異なります。彼らの体表は油分を多く含んでいて水を弾きますし、硬い外骨格は水に溶けません。トイレットペーパーのように水中でほぐれることがないため、排水管のS字トラップや曲がり角に簡単に引っかかってしまうのです。そして、一度引っかかったゴキブリの死骸は、後から流れてくる髪の毛や他のゴミ、トイレットペーパーなどを絡め取り、雪だるま式に詰まりを悪化させていきます。特に築年数の古い建物では、配管内部に汚れが固着していることが多く、ゴキブリが格好の「核」となってしまうのです。さらに厄介なのは、集合住宅の場合です。自分の部屋で流したゴキブリが、階下の住人の排水管を詰まらせるというケースも少なくありません。そうなると、原因の特定や修理で大変な騒ぎになりますし、修理費用も高額になりがちです。高圧洗浄機を使ったり、場合によっては床を剥がして配管を交換したりする必要も出てきます。数万円から、ひどい場合は数十万円の出費になることもあります。たった一匹のゴキビを流したばかりに、ご近所トラブルと高額な修理費という二重の苦しみを味わうことになるのです。トイレはゴミ箱ではありません。流していいのは、排泄物とトイレットペーパーだけ。この大原則を、どうか忘れないでいただきたいですね。」田中さん、ありがとうございました。